分福茶釜のむかしばなし

こんにちは、熊谷墓園石材部の齋藤です。今回は、私の出身地である館林にまつわる昔話を紹介します。

結論から言いますと、「分福茶釜」とはみんなに福を分けてくれる、たぬきの茶釜の事です。

福を分ける、たぬきの茶釜とは何だ?!と言いますと、むかしむかしまでさかのぼり、今回の昔話が始まる訳です。時は「むかしむかし」、場所は上野国館林、舞台は茂林寺というあるお寺での出来事です。

ある日の事、茂林寺の和尚さんが村で茶釜を買ってきました。千人法会で使う為です。そして当日、早速茶釜を使ってみたところ、どんなにお茶を入れても茶釜のお湯が減りません。変だなと思いつつも眠りにつくと、茶釜が置いてある部屋から何やら物音が聞こえます。

おそるおそる覗いてみると、何と茶釜がドロンとたぬきになりました!たまげた和尚さんは、慌てて皆を呼びに行き、再び茶釜のある部屋まで戻ってみると、茶釜は何事も無かったかのように、手も足も尻尾もなく、そこにありました。

翌日、何やらけったいな茶釜を買ってしまった。茶釜代損したなと腹いせまがいに、和尚さんが茶釜を壊そうとしたところ、昨晩見た手と足と尻尾がポンポン生えてきて、茶釜がたぬきになりました!

「驚かせてしまって御免さぁ。和尚さんに恩返しがしたかっただけなんさぁ」と、たぬきが土下座をしました。

茶釜代「倍返しだ!」と、怒ることもなく許した和尚さん。むしろこの不思議なたぬきの茶釜にビジネスチャンスを感じ、お寺の境内の中に演芸場を作りました。そんな和尚さんの期待に、見事に応えたたぬきの茶釜。輝くステージの上でギャラリーを沸かせる綱渡り!宙返り!と、アクロバットの数々!「恩返しだ!」と、破竹の勢いを見せるそのスター性は、日に日に増すばかりです。

世にも珍しいたぬきの茶釜のショータイムに、お客さんも大喜び。連日の大盛況で、懐が暖かくなった和尚さんは、私腹を肥やすことなく、村のため皆のため、橋を作ったり堤防をつくったりインフラを整備していき、社会に貢献していきました。

お金を集め、皆の為に使いたい。その思いを叶えるために檀家に寄付をお願いするのは、お金を集める手段の上で簡単かもしれません。しかし、和尚さんはそうではなくビジネスとして目の前に突然湧いて出たチャンスを、チャンスロスすることなく、見事につかみ皆へ還元したのです。

この事から和尚さんの才覚と、たぬきの茶釜の光り輝くタレント性のおかげで、結果的に「みなに福が分けられた」として、「分福茶釜」と名付けたのでした。

何気ない昔話。されど油断ならない昔話。学ぶことはどこにでもあるものなのかもしれません。もし皆様の前に突然チャンスが降って湧いた時、つかみますか?見送りますか?それとも、気づきませんか?私は、たぬきの茶釜がもし現れたら、つかんでみたいと思います。

みなに福を分け与えられるように、ね。

年間管理費なし