檀家制度と先祖の供養
お墓を建てることがご先祖の供養につながる。その考え方が広まったのは、江戸時代に檀家制度が確立されてからです。
檀家制度は、そもそもキリシタン弾圧のために、徳川幕府が採った政策です。
まず、1615年に寺院法度を制定して、各宗派の寺院をそれぞれ、本寺と末寺に分ける字金の階級制度を設けました。その後、すべての民衆をいずれかの寺院の檀家とする檀家制度を導入し、檀家の宗派や家族構成、年齢などを記載した「宗門人別帳」を寺院に作らせました。
これにより、キリシタンかどうかを、判別しようとしたのです。
この檀家制度のもとにおいて、寺院は強固な財政基盤と強大な権力を獲得していきます。たとえば、宗祖の忌日、釈迦が入寂した仏忌、盆、彼岸、先祖の命日などには寺院に参詣することを義務付けて、その際にはお布施(寄進)を徴収しました。しかも旦那寺は、これらの忌日に参詣しない者に対しては、宗門人別帳から抹消し、宗門奉行に届け出るなどの厳しい措置を採ったのです。
その際に旦那寺は、先祖の供養をとくに重視しました。先祖を十分に供養することが檀家の務めであり心がけであるとの認識を植え付け、励行させたのです。
その背景には、思想的なものよりもむしろ、檀家に参詣や寄進を求めるには宗祖や釈迦の法要よりも先祖供養の方が説得力がある、という実利的な判断があったものと思われます。